長岡駅前の「まちなかキャンパス長岡」で開講されている市民向け講座「まちなか大学」にて、SFプロトタイピングを活用した講座を担当しました。
今回の講座は、「『みんなで』子育てするまち ~妊娠・出産・育児を考える~」というテーマのもと、全5回にわたって開催され、その最終回(第5回)として「⑤みんなで子育ての仮想未来を考えよう」を実施いたしました。
妊娠・出産・育児といったテーマは、個人の価値観に強く関わるため、公の場で率直に語り合うことが難しい側面があります。近年では、多様性の尊重が進む一方で、異なる意見に対する発言をためらう風潮もあり、職場や学校などでは、こうした私的な話題に触れること自体が難しくなっているように感じます。
しかし、少子化という大きな社会課題に直面している今こそ、日常的にこうしたテーマを話し合うことが重要であると考えます。
そのため今回は、あえて触れづらいテーマである「子育て」に対して、SFプロトタイピングという手法を活用し、フィクションの力を借りて自由に未来を描きながら議論を行うというアプローチを取りました。
現実から少し距離をとることで、本音を引き出し、未来の社会像について多様な視点から考えるきっかけになればと考えています。
プログラム
19:00-19:05 オープニング
19:05-19:20 インプットトーク(子育ての歴史的変遷)
19:20-19:50 グループワーク1(作成済みのSFシナリオを元に意見交換)
19:50-20:25 グループワーク2(SFシナリオの設定を考える)
20:20-20:30 クロージング
グループワーク1
7歳の誕生日に子どもが正式にその親を「選ぶ」か、別の育成者を希望するかを決定する「親任法」という制度が制定されている2125年の社会を舞台にしたシナリオを提示。
この制度について、 どのように考えるかグループで意見交換。
□良い面と悪い面を考えてください。
□怖いな、嫌だなと思った場合、その理由は何ですか?
登場人物
ーー
グループワーク2
あなたは2100年を舞台に、ある家族を描く映画の脚本を書くことになりました。
次の設定は決まっています。
・2055年に出生率が0.5まで低下した。
・国家の存続が不可能であることが国民にも共有されていた。
・そこで、子育ての考え方が抜本的に変わった。
・その結果、2100年に1.5まで回復した。
ワークシートを元に物語の設定の続きを考えてください。
ユートピアパターン(理想的な未来)とディストピアパターン(望ましくない未来)を考えてみてください。
参加者は4つのチームに分かれ、グループワーク形式で議論を行いました。
20代から70代までと参加者の年代は幅広く、また、本講座でのグループワークは初の試みでしたが、各チームとも設定にうまく入り込み、活発な意見交換が行われていたのが印象的でした。
また、議論の中では、通常の少子化対策に関する議論の場では倫理的な観点から口にしづらいような意見やキーワードも出ていました。それらを最終的に採用するかどうかは別として、「そうした観点が存在する」という事実を共有することは重要であると考えます。それが達成できたことは、フィクションを介した議論ならではの効果であると感じました。
なお、今回は多様な世代・性別の方にご参加いただきましたが、「妊娠・出産・育児に関心がある」という点では、同じの属性の方々であったともいえます。一方で、こうしたテーマにおいては、関心が薄い方々も巻き込んで議論することが、より多様な視点の共有につながるのではないかと考えます。
今回の講座が、そのような対話の輪を広げるきっかけとなることを期待しています。